告白

今日のような満月の夜になると、あの日のことを思い出すのです。


中学二年生の時、私には麗子ちゃんという友達がいました。寡黙でありながら、どこか暖かい表情を向けてくれる彼女のことが私は大好きで、家が近かったこともあり帰り道はいつも一緒でした。

その日もいつものように、二人で何を話すでもなく帰り道をとぼとぼと歩いていました。空に浮かぶ満月は街を仄かに照らし、気持ちのいい夜でした。暫くの間、ぼんやりと月を眺めていると二人の頭上をカラスが鳴き声を上げて飛び去りました。夜にカラスが鳴くなんて珍しいとは思いましたが、別段気にも留めませんでした。

私の家が見えてきた頃、麗子ちゃんがぽつりぽつりと話を始めました。なかなか本題に入らない麗子ちゃんの様子にどこか張り詰めた空気を感じ、私の心臓は鼓動を早め、軽く握っていた手のひらにはびっしょりと汗をかいていました。

麗子ちゃんは長い遠回りをした後、私のことを愛していると告白しました。私は何が起きたのかわからず、めまいを起こしそうでした。体の中では今にも胸を突き破りそうなほど、心臓が激しく鳴っていました。麗子ちゃんの顔を恐る恐る覗いてみると、濡れそぼった丸い瞳が薄暗闇の中で光っていました。

気が付くと私は自室の中でうずくまっていました。窓にはカーテンが隙間なくかかり、部屋は真っ暗でした。

次の日のホームルームの時、担任の先生から麗子ちゃんが亡くなったことを聞かされました。布団のシーツで首をくくり、自由を奪われた体が宙を浮いている姿を早朝にお母さんが発見したそうです。


窓から見える満月はあの日と変わらず、仄かに夜の街を照らしています。こんな満月の夜になると私は朝になるまで鳴くのです。